7日目――再会

もはや生きる屍となったオレにとって、髑髏との対話は最後の慰みとなった。オレはヤツの話に徐々に引き込まれ、時が経つのも忘れ質問を浴びせかけていた。

「アンタの額に刻んであるその"20"という数字には何か意味があるのか?」
「これか……わたしとお前との間にある距離、とでも言っておこう。」
「距離?」

「わたしはかつてお前だった。そして、わたしはお前の骨になることを望んだ。しかし、骨になることを望まないわたしもいた。わたしは何度もそのもう一人のわたしを説得した。
一緒に骨になろう。骨になることこそが正しい選択だと。しかし、彼はわたしの言うことに耳を貸さなかった。致し方なくわたしは彼と分かれた。骨に成りゆく者と肉をむさぼる者。
その距離は次第に大きくなった。彼は次第にわたしの姿を見失って行った。そして、再びこうして再会の日がやってきたというわけだ。」

「………再会だと? つまり、オレはアンタのいうことに耳を貸さなかった肉を貪る者の成れの果てということか。」

「ああ、その通りだ。それが人間だということだ。お前の生き様を見てみろ。動物の屍肉を貪り、植物の果肉を食らう。あげくの果てが地球の内臓にもどん欲に食らいついている。
つまり、お前はお前だけでは自立できない存在だということだ。だから実体は何もない。無だ。しかしわたしは20の実体を持っている。この額に刻み込まれているのはその実体の証だ。」
「そんなお偉いアンタが、なんでここで、そんな哀れな人間に再会する必要がある?」
「質問が好きなやつだな。いいだろう。昔のよしみで教えてやろう。
20が存在の円環を支配しているということだ。つまり、わたしがオメガならば、おまえはアルファだということになる。そのつなぎ目でわたしとお前がこうして出会っているということだ。」

「なるほど。この世界を見れば終わりが存在するのは分かる。しかし、この腐り切った世界に一体何を始めることができるというんだ。」
「確かに、すべての絶望はわたしがもたらしてきたものという言い方もできるだろう。しかし、それは人間を滅ぼすためではない。人間の絶望は新しい宇宙卵を排卵する能力となっている。わたしにはその卵が必要だったのだ。」
「薄気味悪い話だな。アンタは人間の絶望を食い物にしてる生き物なのか?」
「そうだ。だから神だと言ったろ。わたしは今からお前をわたしがかつていた13の場所まで運んで行かなくてはならない。そうすることでわたしはわたしであることから真に解放される。いいか、20足す13で33だ。分かるか。33がシステムの上限なのだ。それ以上は何もない。」
「まるでオカルトだな。オレはそんな話は信じないし、アンタについて行くのもまっぴらごめんだ。」
「残念ながら、お前はわたしの話を否定することも肯定することもできない。言ったはずだ。お前はかつてのわたしなのだ。だから、今からお前が経験することは、すでに遠い昔に起こったことでもある。わたしにはお前の出自が見えている。しかし、おまえにはわたしの出自は見えない。わたしは本当のお前なのだ。さぁ、そろそろ時間だ。」

そういうと、水晶の髑髏はふわりと中空に浮かび上がり、ゆっくりとオレの方に近づいて来た。ヤツの言う通りだ。オレの中にはヤツを受け入れたい自分と徹底的に拒否したい自分が同居していた。この葛藤に決着がつくことはないだろう。髑髏の顔がオレの顔面の間近にまで迫ってきたとき、オレは覚悟を決めた。死ぬ必要はない。最後まで、生き抜くのだ――。

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こうしてテッサラクトの中には誰もいなくなった。今やその天井部には五角形状の穴が穿たれ、生まれたての銀河が渦を巻き始めていた。それは新しい人間たちを吐き出してくる女陰となるものだった。人間が再びテッサラクト内に登場してくるのは、オレが13を創造したときになるのだろう。そのとき、オレの13はヤツにとっての260となり、この聖数260に至って、ヤツはすべての輪廻の環から解放され、今度はオレがヤツの20の刻印を引き継ぐ番となる。そして、13の継承のセレモニーにおいて、オレは例の七つのラッパを新しい天と地に向かって響き渡らせ、新しい勅令を発布するのだ――産めよ、増えよ、地に満ちよ、肉を貪る者たちよ!!

[Star People vol.21 - 22]
text by Kohsen Handa